・不動産登記とは?登記制度について
・不動産登記簿の見方
・不動産登記の注意点、悪質な事例紹介
少し前に「積水ハウス地面師事件」という積水ハウスが60億円以上をだまし取られた事件が世間を騒がせました。この事件は不動産登記に関連したものです。不動産のプロ中のプロである積水ハウスでさえも、60億円以上をだまし取られてしまいました。。。
マイホームや不動産投資を検討される読者の皆様においても、決して他人事ではありません。本記事をご一読頂き、少しでも不動産登記制度に関するご理解を深めて頂けましたら幸いです。
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第27話:地面師に騙されない!不動産登記制度の基礎 https://youtu.be/mE3m4nIYhlc |
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不動産登記制度とは?
そもそも不動産登記とは?
登記と聞いて皆さんは何を思い浮かべますでしょうか?
多くの方は、会社登記をイメージされるかもしれませんね。
この日本における登記という制度は、権利関係などを公に明らかにするために設けられた制度のことで、様々な種類があります。今回ご紹介する「不動産登記」も登記の一つで、入手した土地や建物が誰のものなのかをはっきりさせるために行われています。
不動産登記は、大切な財産である土地や建物の所在・面積のほか、所有者の住所・氏名などを公の帳簿 (登記簿)に記載し、これを一般公開することにより、権利関係などの状況が誰にでもわかるようにし、取引の安全と円滑をはかる役割を果たすものになります。
不動産登記を行うと、法務局が管理する公の帳簿上に、
「どこにある、どのような不動産(土地・建物)なのか」
「所有者は誰なのか」
「どの金融機関から、いくらお金を借りているのか」
といった情報が記録されます。
こうした情報は一般に公開されていて、手数料を支払えば誰でも閲覧ができ、登記内容が記載された登記簿謄本(登記事項証明書)の交付を受けることもできます。また現在は、法務局のサイト上で、わざわざ法務局まで足を運ばなくても、確認することができます。
日本の不動産登記制度
不動産登記制度は国によって制度が異なります。以下に他国の制度と比較しながら日本の不動産登記制度の特徴を記載します。
土地と建物は別個扱い
日本では、土地と建物は別個の不動産として取り扱われ、登記も別々に行うことができます。台湾や韓国では同様です。
一方で、ドイツ、フランス、イギリス、アメリカ、オーストラリアなどの欧米諸国では、建物は土地の附合物とされ、建物単独に権利を設定することや、登記や取引を行うことはできません。
登記の対抗力
- 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに 従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができません(民法177条)。
- 同一の不動産について登記した権利の順位は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記の前後によります(不動産登記法第4条)。
つまり、登記をしなければ、自身が所有者であることを第三者に示すことができない、ということになります。
登記の公信力が認められていない
日本では、登記の公信力が認められていません。この「登記の公信力」という言葉は分かりづらいのですが、非常に重要な概念ですので、以下に開設します。
登記の公信力:登記上の表示を信頼して不動産の取引をした者は、たとえ登記名義人が真実の権利者でないような場合でも、一定の要件のもとでその権利を取得することが認められること
日本では、登記の公信力を認めていません。したがって、いくら登記名義人が真実の所有者と思って、そ の者から不動産を買い受けたとしても、真の所有者がいる場合には、その所有者から不動産を取り上げることは認められない、ということになります。
つまり、買主は売買の際、誰が真の所有者なのか、登記上の所有者と一致しているのか、をしっかりと確認しなければなりません。
登記簿記載事項
以下の画像が登記簿謄本の例です。
登記簿謄本(登記事項証明書)は一つの不動産(1筆の土地※・一つの建物)ごとに一つ作成され、A「表題部」、B「権利部(甲区)」、C「権利部(乙区)」の三つに分かれています。
※土地登記簿上で、土地の個数を表す単位。1筆(いっぴつ)、2筆(にひつ)と数えます。
登記簿謄本の見方
(A)表題部
表題部は、どこにどのような不動産があるのか等を記載しています。表題部に記載されているのは土地・建物に関する情報で、表題部を見ればどこにどのような不動産があるのかがわかるようになっています。
表題部に記載される情報
土地…所在、地番、地目(宅地、畑、雑種地など)、地積(面積)、登記の日付など
建物…所在、家屋番号、建物の種類(居宅、店舗、事務所など)、構造(木造、鉄骨造など)、床面積、登記の日付など
権利部
権利部は権利部は、不動産の所有者の権利等を記載しており、(甲区)と(乙区)に分かれます。
- 不動産登記法に基づき登記することができる権利は、所有権、地上権、永小作権、地役権、先取特権、質権、抵当権、賃借権、採石権の9種
- 占有権、入会権、留置権、使用貸借権は登記不可。
(B)権利部(甲区)
権利部(甲区)に記載されているのは所有権に関する情報で、所有者の住所や氏名、不動産を取得した日付や原因(売買、相続など)なども記載されています。そのため、権利部(甲区)を見れば、現在の所有者だけではなく、過去の所有者までどのような経緯でその不動産を取得したかを知ることができます。
(C)権利部(乙区)
また、多くの方が不動産の購入においてローンを利用されると思いますが、その際に貸出金融機関の抵当権が設定されます。この際の抵当権の詳細が記載されるのも権利部(甲区)になります。したがって、現在や過去の所有者が、その不動産の購入にあたりローンを利用したのか否か、また利用している場合に、どこの金融機関でローンを借りたのか、ということが分かるようになっています。
抵当権以外の権利が存在する場合にも、この権利部(乙区)に記載されるため、不動産の完全所有権を阻害するような権利が付着していないかも確認する必要があります。
たとえば、地上権、地役権、通行権、賃借権などが考えられます。
登記簿謄本の取得方法
法務局
皆さんもGoogleで検索して頂ければ近くの法務局を検索できるはずです。法務局では全国の謄本の閲覧・印刷の請求をすることができます。
インターネット上
登記情報がオンライン化されており、法務局の「登記・供託オンライン申請システム」の「かんたん証明書請求」からインターネットで交付の請求をして、最寄りの登記所の窓口か郵送で受け取ることができるようになりました。
また、登記簿謄本の内容を確認するだけなら、「登記情報提供サービス」を利用してインターネットで閲覧できます。公的な証明書には使えませんが、PDFでダウンロードも可能なのでとても便利です。
不動産登記が必要な場合
では、この不動産登記は必ずしなければならないのでしょうか?
実はこれについても、不動産登記法という管轄法が規定します。
不動産登記は不動産を取得(購入、相続、新築など)したときだけでなく、登記内容に変更が生じた場合にもしなければなりません。
不動産を取得したとき
不動産を購入、相続するなどして取得した場合には、所有権が自分に移ったことを示すために「所有権の移転登記」をします。また、建物を新築した場合や、まだ登記されていない建物を購入した場合には、表題部を新しくつくる「建物の表題登記」と、権利部の甲区欄を新しくつくる(所有権を初めて登記する)「所有権の保存登記」をします。
この取得については、売買だけではなく相続の際も該当します。不動産の所有者が亡くなって相続が発生したときには、不動産を相続した人が「所有権の移転登記」をします。
記載事項に変更があったとき(権利の設定、会社名義、住所変更など)
権利の設定
権利の設定の際に必要です。
会社名義、住所変更
転勤などで住所変更があったときや、結婚などで姓が変わったときには、登記名義人の「住所・氏名の変更登記」をします。
住宅ローンの完済時
住宅ローンを払い終わっても、設定されている抵当権を金融機関が抹消してくれるわけではありません。住宅ローンを完済すると、金融機関から住宅ローンの支払いが終わったことを証明する書類が送られてくるため、受け取った書類を使って、不動産に設定されている抵当権を抹消する「抵当権の抹消登記」をしましょう。なお、不動産の購入時に抵当権を設定するのは、不動産を購入した本人ではなく融資をした金融機関です。
建物取り壊したとき
建物を取り壊したときには「建物の滅失登記」をします。
不動産登記の期限
不動産登記には登記の種類によって期限があり、期限を守らないと罰則もあります。
建物の表題登記
建物を新築したときや、まだ登記されていない建物を購入したときに行う「建物の表題登記」には期限があり、新築の場合には「建物の完成後1カ月以内」に、まだ登記されていない建物を購入した場合には「所有権を取得した日から1カ月以内」に申請しなければなりません。1カ月を過ぎても登記することはできますが、法律には「申請をすべき義務がある者がその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する」(不動産登記法第百六十四条)と規定されています。
その他の登記
実はその他の登記は、具体的な期限は設定されていません。ですが、登記をしないとトラブルに発展する可能性があります。
建物の表題登記以外の登記については登記の期限がありませんが、そのままにしているとさまざまなトラブルに発展することがあります。
不動産購入後、所有権登記をしない
契約書を交わし、代金を支払っていても、所有権の移転登記を済ませていなければ、第三者に自分の所有権を主張できません。売主の中には悪質な人もいて、複数の人に同じ不動産を売却しているケースもあります。これを二重売買と言います。この場合、自分が登記をする前に誰かが登記を済ませてしまうと、不動産の所有権を失ってしまいます。そのため、不動産の売買では、代金の支払いと同時に所有権の移転登記をすることで、身を守ることができます。
不動産相続発生後、所有権移転登記をしない
不動産を相続してから時間が経過すると、新たな相続人が発生してしまい、相続登記に必要な戸籍、住民票といった書類の収集が困難になることがあります。また、遺産分割協議に手間取り、多くの時間と費用を要することもあるため、不動産を相続した場合には、早めに登記を済ませるのが良いです。
ローン返済後、抵当権抹消登記をしない
不動産に設定された抵当権を抹消するのが「抵当権の抹消登記」です。ローンの返済が終わると、金融機関から抵当権を解除したという証明書類が届くため、その書類を基に抵当権抹消の手続きをします。
抵当権の抹消登記をしなくても日常生活に問題はありません。しかし、不動産の売却などをする場合には抵当権の抹消手続きをしなければならず、ローンを完済してから時間が経過すると、手続きに必要な書類をそろえるのに手間と時間がかかってしまいます。また、ローンを利用した金融機関が破たん・再編などでなくなっていると面倒なことになるため、早めに抵当権の抹消登記を済ませた方が良いです。ただ、ローン返済時の抹消登記は、金融機関からも求められることが多いですので、通常はあまり心配する必要はありません。
不動産登記の費用
登録免許税
登録免許税は登記を受けることに対して課税される税金で、売買、相続、贈与、抵当権抹消など、登記の種類によって費用が異なります。
- 売買時の所有権移転登記に必要な登録免許税
土地…評価額の1.5%(令和3年3月31日までに登記を受ける場合)
建物…評価額の2%だが、一定の条件を満たす住宅用家屋は0.3%などの軽減税率あり - 相続時の所有権移転登記に必要な登録免許税
土地、建物ともに評価額の0.4% - 贈与時の所有権移転登記に必要な登録免許税
土地、建物ともに評価額の2% - 抵当権抹消登記に必要な登録免許税
抵当権が設定されている建物と土地、それぞれ一つにつき1000円
(土地の場合は1筆を一つの土地として計算します
専門家(司法書士や土地家屋調査士)への手数料・報酬
不動産登記に関する登記の手続きは司法書士に依頼しますが、表示の登記については土地家屋調査士に依頼します。その際に支払う報酬の額は、登記の内容ごとにそれぞれの事務所が報酬額を決めています。そのため、不動産登記に必要な費用は、地域や事務所によって大きな開きがあります。
司法書士報酬の費用の目安
- 所有権移転登記 相続 6万円~8万円
- 所有権移転登記 売買 4万5000円~6万5000円
- 所有権保存登記 2万円~3万円
- 抵当権抹消登記 1万5000円~2万円
- 住所・氏名の変更登記 1万2000円くらい
また、司法書士が金融機関などに赴いて、代金の決済にも立ち会う場合には交通費が、面識のない売主の本人確認情報の作成が必要な場合は関連費用が、それぞれ別途で必要になります。
土地家屋調査士の費用の目安
建物表題登記 8万円くらい
実は自分で登記も可能
不動産登記は司法書士や土地家屋調査士に依頼しないといけないとお考えの方は多いようですが、登記所に出向いて手続きをすれば、自分で不動産登記を行うことができます。自分で不動産登記をすれば、司法書士や土地家屋調査士に支払う報酬が不要になるため、費用をかなり抑えることができます。登記にはさまざまな種類があり、内容によってはかなり専門的な知識が必要になりますが、事前準備をしっかりとして、不動産登記にチャレンジしてみるといいかもしれません。
注意点
- 司法書士を通さないと取引のリスクが高くなる
不動産取引では、売主が本物の売主なのか、取引に違法性がないのかなど、法律の専門家として取引をチェックすることも司法書士の役割になります。そのため、司法書士を通さずに自分で不動産登記をすると、地面士による不動産詐欺などを見抜けなくなる可能性があります。不動産購入時にはリスク回避を兼ねて、司法書士に依頼することも必要です。 - 金融機関の了承が必要になることも
ローンを利用して不動産を購入する場合は抵当権の設定が必要で、金融機関が取引の安全性を確保するため、司法書士への依頼を求めてくるのが一般的です。自分で不動産登記をしたいとお考えの場合には、事前に金融機関などに相談しておくといいでしょう。 - 建物の表題登記には図面が必要
建物の新築時などに行う建物の表題登記も自分ですることができますが、建物図面や各階平面図などの書類が必要になります。作成には専門的な知識が必要になるため、自分で表題登記をするのは難易度が高いといえるでしょう。
不動産登記に関する実際にあった怖い事例
積水ハウス地面師事件
積水ハウス地面師事件という、不動産に関する前代未聞の事件が起きました。。。
代金を支払って、無事に買ったと思ったら、、、
- 重要な登記書類をもった司法書士が登記書類を持って逃げる
- 売主が二重売買をして、別の人へも売却し、その人が先に登記完了
- 売主が本当の所有者ではなく、登記必要書類もニセモノ
これが2017年8月に大手デべが巻き込まれた地面師事件の真相です。
最終的に、五反田所在の約600坪購入のために振り込んだ約63億円が消えてしまいました
現在、ITの発展で便利になっているところは多いですが、その反面、高度な技術を駆使した登記書類の偽造なども行われています。
登記を適切に行って初めて不動産取引完結となりますので、最新の注意を払って代金振り込み・所有権移転登記手続きを行うようにしましょう!
いかがでしたでしょうか。
少しでも皆様にお役に立てる記事でしたら、幸いです。
・不動産登記とは?登記制度について
・不動産登記簿の見方
・不動産登記の注意点、悪質な事例紹介
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